正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

ヨガライフスクールインサッポロ 機関紙「未来」ウェブ

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私は今どのあたりか

人生八十年の時代といわれてはいますが、全ての人が長寿を全うできるわけではありません。また、六十五歳になったので、今日から私は年をとったというものでもありません。さて、私たちは今人生の道のりの、どのあたりにいるのでしょうか。まだ若いと思っていても、自分がいつまで生きられるのか、それは誰にもわかりません。

生活習慣病についての情報がたくさん伝えられ、健康が正義のように掲げられます。半ば強制的に健康診断を受けさせられ、自分の健康を確認させられる。こんなに健康を考えさせられる時代はなかったかもしれません。

健康番組は視聴率を上げ、健康のために何をしているのかが話題になります。たばこをやめる、お酒を控える、甘いものを食べない、塩分を減らす、運動する、歩く、ジョギングする、などなど。

これらの健康法が勧められる根拠は、健康法をした者としない者の健康の差、寿命の差であり、ほとんどは数字できちんと示されています。たとえば、たばこを吸わない者と一日四十本程度たばこを吸う人との肺がんになる率。ただし、統計の数字はすべての人を同じに考えます。なので、個人差はないです。一日の喫煙量がこれだけの人は肺がんになりやすいとか、肥満している人はこういう病気になりやすいということです。

さて、好きなものをやめてまで、辛い思いをしてまで健康に気を使い、余分に生きたい理由は何なのでしょう。その生きている時間は何に使いますか。人は健康のためにどれほど留意しても、いつまでも生きていられるわけではないのです。

年をとると体の調子が悪くなります。肩凝り、腰痛、目のかすみ、むせやすくなり、眠れない、便秘。健康管理は自分で注意しなければなりません。悪いところはもちろん治療を受けたほうがよいですが、若いころと同じにはなりません。ある程度の痛みや不自由さはしかたがないと、受け入れることも大切なのかもしれないと思うこのごろです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」293号(2010年5月6日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。