正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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ナルシストは命を縮める???

自己愛型人間が増えているといわれています。ちょっとしたことで傷つき、人や社会など周囲に責任転嫁して自分の殻に閉じこもる。そんな若者がみなさんの周りにもいますか。

もちろん自己愛は、全てがいけないものではありません。自己愛には、指導性・権威、優越感・高慢さ、自己耽溺・自己賛美、特別な権利主張、不当な他者利用などがあります。思春期から成年にみられる思考パターンで、特別なものではありません。しかし、自己愛が強すぎて合理的に生きられない場合には、周りがたいへん迷惑します。過剰な傲慢さと責任転嫁された周囲とは人間関係がうまくいくはずはありません。身勝手さに振り回されてしまいます。

ところが、この自己愛、周囲が困ったことになるだけではなく、自己愛の強い本人にも大変なことが起きているようです。アメリカのミシガン大学の研究報告によると、先の理解しがたい特別な権利主張や不当な他者利用というよろしくない自己愛の特性に高いスコアを示した男性は、高血圧や心臓障害につながるストレスホルモンの値が著しく高かったそうです。同じ程度の自己愛の女性にはこのストレス反応は認められないものです。

ストレスホルモンの高スコアは、破壊的な自己愛の男性にあらわれるようです。ストレスを感じていることを認めると、助けを求めることができますが、その可能性が低いため、特に危険性が高くなるようです。健康に悪影響をもたらします。

自己愛型人間が簡単に変わるとは思いませんが、周りが受け入れられる程度には変わるかもしれません。まずは、人の話を聞く形を作ることです。人の話を最後まで聞く習慣のない場合が多いので、とにかく最後まで話を聞く訓練です。できれば、セミナーや講習を受けることをお勧めします。ただし、そんな訓練に興味は持てないでしょうから、話を聞くテクニックを知るとよいことがあると、自己愛をくすぐる必要があるかもしれません。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」317号(2012年5月7日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。