信号機の時間設定は、うつや認知症の高齢者を増やす
年をとるにつれ、歩行速度は落ちていきます。筋力の低下、関節の軟骨がすり減ることによって痛みが生じ、早く歩くことができなくなります。腰の曲がった格好で早く歩くこともなかなか難しいものです。
高齢者のほとんどは、信号機の設定されている時間内で横断歩道を渡りきることができない、という研究結果が報告されています。今の設定時間で求められるスピードに足らない高齢者が多いというものです。
65歳以上の平均歩行速度は、男性は毎秒0・9m、女性は0・76m程度です。横断歩道を渡るには、毎秒1・2m程度が必要のようです。
安全に道路を渡るということは、高齢者にとってはハードルの高い課題になっています。交通量の多い横断歩道を渡りきることができないために、横断を避けることになります。道路を渡らなければ、日常の生活に必要な公共のサービスやお店へ行く機会を減らすことにもつながります。
さらに、老化による視覚や聴覚の低下が加わると、外出すること自体に危険性を感じ、外出せずに引きこもりがちになってしまうこともあります。高齢者に限ったことではありませんが、引きこもりがちになると、興味や関心が低下し、うつや認知症の原因につながることも考えられます。大げさに感じるかもしれませんが、信号機の時間設定にはこんな影響があるのです。
高齢者が安心して歩くことができ、外出の機会を増やすためにはどういったことが必要なのか、何ができるのか、地域で考えていかなければならないことと思います。
男性の84%、女性の93%は歩く速度に自信がなくなっています。横断する時間の設定を延長することのできる信号機が、病院の周辺にはありますが、全ての信号機の設定時間を検討する必要があるのではないでしょうか。
車を運転しているときは、「信号につかまった」という感覚になりやすいです。ですが、ひと呼吸おいて安全運転。交通事故の多い日本では重要な課題です。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」319号(2012年7月5日発行)に掲載された記事です。
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