正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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肥満の功罪

肥満とは単に体重が重いということではありません。体の脂肪が多すぎることをいいます。ですから、筋肉や骨が多くて体重が重い場合は、必ずしも肥満であるとは限りません。

また、肥満がすべて悪いのではなく、軽い肥満の人は標準体重の人より早死にしない、という研究もあります。太っていることがよいというわけではなく、筋肉量のあることが大切というわけです。

そこで、食事は重要です。定期的に朝食をとることが健康上の利益に関連しているという研究があります。朝食の頻度と筋肉機能を調査した東北大学の研究です。2008年から2011年の研究で、仙台市内の19歳から83歳の日本人が参加したものです。筋力の指標には握力が使われています。握力は朝食摂取頻度と相関がありました。つまり、朝食を毎日食べている人のほうが、食べていない人よりも握力があるという結果です。生活習慣や健康関連因子を考慮した結果です。朝食は抜かないほうがよいです。

最近はメタボよりも適切な食事を取らずにいる低栄養が問題になっています。低栄養は、体を動かす運動の機能を低下させます。健康寿命をアップさせるためにも重要です。

別な研究に、肥満と学業成績の関係を示したものがあります。イギリスの研究です。10代の肥満の女子は標準値の体重の女子に比べて学業成績が悪い傾向のある結果でした。イギリスの子供5966人のデータを分析したもので、11歳の時に肥満だった女子は正常体重の女子に比べ、11、13、16歳時の成績が低かったそうです。英語、数学、理科の全体の平均成績はCですが、肥満女児ではDであったそうです。精神的健康、IQ、社会的および経済的状況、月経周期など、ほかの考えられる因子を考慮しても、同じ結果だったそうです。この関係は男児ではさほど明確ではなかったものでした。因果関係は証明されていませんが、気になる研究です。

研究は継続されますが、親も子どもも、教育関係者も意識する必要はありそうです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」340号(2014年4月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。