正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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60代になって思うこと

60代になって思うのは、自分に厳しい人や他人に厳しい人がなんと多いのだろうということです。もちろん、大谷翔平選手のようにストイックに生き、才能豊かに成功している人がいるのは間違いありません。若い時には、自分の秘めたる可能性を探るために、無理して頑張ることも大切かと思います。

たしかに、私たちは頑張ってきました。家族のために遅くまで働いたり、子どものために朝早く起きてお弁当を作ったり、我慢して人とお付き合いしたり、嫌なことも断らずに頑張った。多くの人がそれぞれの状況で、本当に頑張っていると感じます。

けれど、無理をしてもなんとかなった若いころとは異なり、年を重ねた今、体力は衰え、気力も衰え、集中力もなくなって、できにくいことが増えていると感じます。このままでは辛すぎる。若い時とは違うのは当たり前なのですが、若い時の自分と比較してしまう。頑張っても、できない自分にがっかりして、ストレスが溜まるだけ。そろそろ、肩の力を抜いてのんびり生きる、楽をしたいと実感します。

もしかすると、私たちは一生懸命に頑張ることは良いことで、楽しく生きることは怠けていると思いがち、そんな文化の中にいるのではないでしょうか。厳しい道を選んだ方が、学びは大きいと信じているかもしれません。大変な道を選び、成長してきた感覚を持っているために、若者にもそれをすすめてしまう。頑張ってきた人であればあるほど、若者に厳しくなっているだろうことが考えられます。それでは、一生懸命に苦しく、くたびれる人がたくさんになってしまいます。

私たちはいろいろ経験しながら生きています。経験して、反省して、計画して、実行する一連のプロセスです。なので、その経験を有効にすることができるなら、もう少し楽に、力を抜いてもできるのだと信じたい。楽に生きていくことは、余裕が生まれるということを、若者に見せつけることも、大切な役割なのだろうと、最近感じています。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」462号(2024年6月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。