正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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目から耳から

人が外界の情報を得るのは感覚器を通してです。その情報のうちの80%以上は視覚からといわれています。次に多い聴覚からの情報は7%といわれていますので、視覚からの影響の大きさがどれほどのものか、わかります。

そのため、目から耳から自分の「老い」を感じることも少なくありません。ものが見えにくくなっても、「年だから仕方ない」、「聞こえにくいのは当たり前」といって、病院へ行かずにそのままにしておくことも少なくないようです。

ところが、高齢者の視力低下は、記憶や理解力をつかさどる認知機能に大きな影響を及ぼすことが明らかになってきました。

奈良県立医科大学が65歳以上の男女3、000人を対象にした研究があります。この研究によると、視力と認知機能のあいだには明らかな相関関係があり、視力の良い人ほど認知機能が高く保たれているという結果を示すものでした。さらに、視力の悪い人の中には、認知機能が認知症レベルまで低下している例もあったそうです。視力の悪い人は視力が良い人の約2倍、認知症の発症リスクが高い、という研究結果です。

先に触れたように、外の情報の約80%を視覚から得ていますが、この情報は脳に伝わります。つまり、視力の低下は脳の働きを衰えさせる原因にもなるということのようです。

ですから、白内障などで目が見えにくい状態をそのままにしておくことは、認知機能の働きを弱め、認知症の原因になるかもしれません。治療可能な病気であれば、きちんと対処したほうが良いということです。

同じように、難聴が認知症と関係があることを示す多くの研究があります。難聴をそのまま放置しておくと、深刻な問題となる恐れとなるようです。聞こえないことにより、会話が成立しなくなる。そのため、人との交流が減ると、刺激の少ない生活になってしまいます。こちらも早目に治療を受けることをお勧めします。かっこいい補聴器も作られています。試してみるのもよいでしょう


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」370号(2016年10月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。