正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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お口の健康とメタボリック症候群

どんなに忙しくても、あるいはどんなに充実した時間をすごしていても、美味しく食事ができるかどうかが、満足度を左右すること、ありますよね。美味しいものをたべたとき、ほとんどの人は笑顔になります。食は生活習慣病と切り離されることのないものですが、お口の健康、噛む力や衛生状態がメタボリック症候群や糖尿病と関連するという話です。

まずは、噛む力についてです。よく噛める人ほどメタボリック症候群になりにくいことが、新潟大学と大阪大学等の共同研究であきらかになりました。50~70歳代の男女1780人を対象に歯科検診と噛む力を測定しました。噛む力によって4つのグループに分けて分析した結果、最も噛む力の高いグループを基準にすると、噛む力の弱い下から2つのグループがメタボリック症候群になる危険性は1・5倍以上と高いことがわかりました。

年齢別にみますと、70歳代の男女では、噛む力の低下した3つのグループ全てにおいて、メタボリック症候群の危険性は1・6~2倍近くに高まっていました。これに対して、50~60歳代の男女では、噛む力とメタボリックの危険性との関連は認められなかったそうです。

噛めないことをはっきり自覚できない年代、70歳代に特に注意が必要です。高齢者は噛めないことによる生活習慣病の危険性にリスクに気をつけなければなりません。また、歯と歯茎の健康、「予防歯科」の考え方が大切です。

この「予防歯科」の重要性についてはもうひとつわかったことがあります。歯磨き頻度と生活習慣病の関連についての研究があります。これは聖路加国際大学の30~85歳までの1万人以上を対象とした研究結果です。毎食後の歯磨きが男性での糖尿病と、女性での脂質異常症の発症を有意に抑制するそうです。歯磨きは心血管系疾患発症の危険性を減少させるために効果的のようです。

歯磨き習慣は重要ですが、生活習慣にあったものでなくては続きません。いつも歯磨きできる環境にないかもしれません。歯科医院での定期的な検診を受けることも大切です。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」372号(2016年12月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。