正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

ヨガライフスクールインサッポロ 機関紙「未来」ウェブ

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眼から耳から:視覚と聴覚

眼から得られる情報である視覚は、私たちにとって非常に大きな情報量を提供するものです。見えるものの形や位置、遠近感、さらには人の顔色をうかがい、危険を察知するのにも視覚が役立っています。視覚が働くためには眼が見えていれば十分と思いがちですが、実際にはそうではありません。視覚は数多くの経験をした上に、他の感覚と統合されて初めて、周囲の世界に関する正しい情報を脳に送るようになるのです。たとえば、私たちは見ようとするもの、注目したいものだけを抜き出してみることができます。これには、残りの部分を背景として抑制する働きが必要とされます。後ろを振り向いたときには、頭の動きを調節する感覚が必要です。さらには、視覚は手を使うときのガイドの役割をします。手先の器用さに大切な役割を果たすには触覚と視覚との統合が必要となるのです。

耳からの感覚である聴覚は、人とコミュニケーションや周囲の音から状況を判断したりするために重要な働きをするものです。なにかに熱中すると、周囲の雑音が聞えなくなります。しかし、必要なことがあると、そちらに注意を移して反応することができます。私たちの環境は音が溢れています。テレビ・ラジオの音、パソコンやワープロの電子音、携帯電話、人の声、車の音、風の音、鳥の声、などなど。こんな音の洪水の中で、知った声を聞分けることもできるわけです。

音の刺激は記憶に結びつきやすいものです。「この音楽がはやっていた頃は…」と、鮮明に場面が浮かぶ経験はありませんか?また、好みが影響するものでもあります。涼やかな風鈴の音が、いらいらの原因となる人もいます。クラシックで目覚め、ハードロックで眠くなる人もいます。また逆の人もいるわけです。自分の慣れ親しんだ音の刺激は、覚醒水準を高めます。BGMに何を選ぶかは、実は大切なことなのです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」155号(1998年11月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
北海道大学 大学院保健科学研究院 生活機能学分野 教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。