正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

ヨガライフスクールインサッポロ 機関紙「未来」ウェブ

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ヨーガの友人・ 生徒さんへ

     - ヨガ

私は最近アイアンガーヨーガの同僚からB.K.S.アイガンガー師のご子息プラシャント・アイアンガー氏の著作の翻訳と出版の提案を受け今その準備をしています。ただ、実際には内外に難しい問題もあり、出版まで漕ぎ着けるかどうかまだ定かではないのですが、ヨーガを理論的に理解する良い機会が与えられたととらえています。

ヨーガや瞑想を少しは深く探究した人なら誰しも悟りや三昧といわれる深い瞑想状態・真理等は言語で表現することも理解することもできず、実践の中で経験する以外にないと受け留めてきたようです。般若心経のなかで般若の知恵の核心を説くくだりは神秘的な意味不明のマントラ(呪文)であり、ヨーガスートラは「ヨーガとはチッタ(心)の働きを止滅することである」と定義しています。このような状態は言語による思考も停止しますから、そのものを言葉で伝達・表現することに忸怩たる思いや矛盾を抱いてきた人も多いようです。ただ、このような理論的理解もヨーガの道を歩む者にその出発点と方向性を示してくれるものと信じ、求めてゆきたく思っています。

アシュタンガヨーガの始祖、マイソールの故パタビジョイス師は生前「ア・ヨーガは99%の実践と1%の理論である」と言っていましたが、自らのヨーガ体系をアシュタンガと命名するほどパタンジャリのヨーガスートラにその根拠を置いていたようです。プーナのアイアンガー道場の入り口にはパタンジャリの像が置かれています。彼はインドでは蛇の神、アディシェーシャの化身であり、人々にヨーガを伝えるために権化したとされています。道場の像も下半身は蛇、手には三種の神器を携え、頭上には千頭のコブラを冠した姿で現わされています。生徒は出入りの際にこの像に手を合わせ礼拝します。

アイアンガーに於けるヨーガスートラ解釈は日本で有名な佐保田鶴治先生のそれとは多少違う面もあります。スートラ(Ⅱ・46~48)のアーサナは座法だけではなく、全てのヨーガアーサナをその背景に含み、各ポーズの実践を瞑想状態になるようにと解します。

私たちがヨーガアーサナを行うとき身体の痛み、問題、病気を癒すため、あるいは健康増進や美容・ダイエット等と身体を目的とすることが多いと見受けられますが、本来のヨーガの目的は早く身体への執着から離れそれを超えてチッタ(心)の内奥、さらにそれも超えて本質的な自己存在へと向かうように。これが私の、そしてアイアンガープラッシャント師のメッセージでもあります。

ヨーガの出発点と方向性を提案しましたから、今度は皆さんのヨーガ実践の中で確かめてください。

合掌と祈り


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」337号(2014年1月6日発行)に掲載された記事です。

著者
吉田 つとむ
心と体のヨガ教室主宰

和歌山市出身、横浜市立大学卒業。パリ大学留学中にヨガと出合い、帰国後、沖ヨガ道場入所。沖正弘導師に師事。ヨガ指導に従事。インド・プーナのアイアンガー道場に通いアイアンガー師に師事。

略歴
・アイアンガーヨガ指導者として認証される。
・プーナの和尚ラジネーシ瞑想センターにて各種心理療法グループ研修後、和尚サニヤシン(出家者)となる。頭蓋仙骨療法(クラニオセイクラル・セラピー・バイオダイナミックス)トレーナー養成コース終了。
・ヴィパアサナ瞑想センターで瞑想修行。以降フェルデンクライス・メソッドの研修、気づきのレッスンとして応用指導に当たる。
・マイソールのアシュタンガ道場でパタビジョイス師に師事。
アシュタンガヨガ修行後、指導者として研修と指導に従事。

翻訳
ヨーガの樹

B.K.S.アイアンガー 著
吉田つとむ 翻訳
サンガ 2015/10/24