植物のめぐみ
健康にいいということで、野菜を食べる人が増えているそうです。それは、野菜のような天然物は身体にいいものをいっぱい含んでいることが科学的にわかってきたからでしょう。例えば発ガン性物質を無毒化する成分とか、血液の流れをよくする成分や、内臓の機能を高めてくれる成分とか、しかも、科学的にはまだ効果がわかっていない成分もたくさんあって、それらが総合的に働いて野菜の薬効を作り出しているわけです。アメリカでも、ビタミン剤を飲むより、丸のまま野菜を食べたほうがずっと体にいいというわけで野菜が見直されてきています。結局、私たちは植物の恩恵を受けて生きているわけですから、自然のものを素直に利用するということですね。
昔から「根ものを食べると元気が出る」といわれてきました。そのわけは、まず1つ目は、根の野菜は土中の栄養分を十分に吸収し、蓄えていること、2つ目は、日光に当たらないのでその成分が変化するようなことがないからで、3つ目は、成長に必要な成分であるアミノ酸をたくさん含んでいて、そのうえ身体に必要な微量成分、ホルモンの働きをよくしたり、体内の酵素の働きを活発にする成分も豊富なことです。4つ目は、調理しても栄養成分があまり減らないということでしょうね。例えば、ホウレンソウを5分間ゆがくと栄養成分が80%抜けてしまいますが、ジャガイモやサツマイモは加熱しても20数%しか栄養成分が抜けません。しかし、根菜類が葉菜類よりいいということではありません。葉物野菜ももちろん体にいいわけですが、ただ薬効という点から比較しますと、例えばこういうことがあります。漢方の主要な生薬200種類を分類した資料を見ますと、葉ものは15種類ですが、根ものは93種類もあります。それだけ根菜類の方が、体に対する効能は幅広く豊かということになりましょうか。使い方を見ましても、根菜類は生で食べる場合と加熱調理して食べる場合とでは、薬効が違ってきます。
要は、野菜は薬剤とは違いますから、毎日、いろんな種類をたくさん食べることが望ましいわけです。
まかり出て花の三月大根かな
一茶
西野次朗
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」459号(2024年3月5日発行)に掲載された記事です。
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