ナス
ナスは非常に適応力に優れた植物で、それぞれの地方の環境やその土地の人の好みに合わせて、丸形、卵形、長形…といった具合に形を変えて定着しています。
珍らしや山を出羽の初茄子
これは芭蕉が奥の細道をたどって出羽の三山詣から鶴岡へ出たときの句ですが、このナスは民田(みんでん)茄子と呼ばれる小粒の一口ナスです。
ナスの美しい紫色には独特の注目成分がありますが、この色は失われやすいため、昔からあの色を保つためにいろいろ工夫をこらしてきました。漬け物にするときに古クギなどを一緒に入れるのもその一つです。
ナスはあまり栄養がないといわれてきました。たしかに、ナスの成分のほとんどが水分ですから、栄養価としてはそんなに高いとはいえないかも知れません。ビタミン類やミネラルの含有量も多いとはいえません。しかし、米国の国立ガン研究所(NCI)が疫学研究の立場から数々の動物実験を重ねた結果、ナスの成分の中にガンを予防する効果のあることがわかりました。
ナスには独特の渋みがありますが、この渋みがポリフェノールやクロロゲン酸などの抗ガン成分なのです。この抗ガン成分は、活性酸素を抑制する働きをしますので、動脈硬化や虚血性心疾患の予防にもなります。
昔からナスは意外にいろいろな疾患に用いられています。薬用に使われてきたのは主としてヘタの部分です。捨てないで、その都度陰干しにして保存しておくようにするとよいと思います。
- 痔―陰干しにしたナスのヘタ四個くらいを黒焼きにしてから粉末にし、これを一週間分として、一日分を二回に分けて服用すると特効があるとされています。
- 魚類の中毒―ヘタの黒焼きの粉末を茶さじ半分くらい飲むか、あるいは生のナスをそのまま食べると、不思議に治る、といわれています。
また茸料理や河豚料理のとき一緒に煮ると毒消しになるといわれています。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」175号(2000年7月5日発行)に掲載された記事です。
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