正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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人生後半の豊かさにむけて 中年期

中年期は、停滞のとき、あるいは老いの始まりといった否定的イメージで語られることの多いものです。その代表的な例が更年期で、この言葉から受けるイメージは、否定的な意味合いが強いのではないでしょうか。しかし、人生80年時代となった現在、中年期はそう否定的にとらえる必要がないかもしれません。豊かな人生の後半を迎えるためには、転換期としての中年期をどのように生きるかが、非常に重要になってくることは間違いないものと思われます。そこで、女性の人生後半にむけての発達課題に深く関連すると思われる問題を考えてみたいと思います。

ひとつは、子育て体験が自分らしさ、アイデンティティの成熟にどう影響するかという点です。中年期を迎えた女性は、家庭人としてのアイデンティティのみでは自分らしさを維持できず、職業に関係なく、後半の人生の支えとなる活動を家庭外に求めています。現代社会において、母親としての体験から自分らしさを確立することは非常に難しいことのようです。

しかし、ライフサイクルの中で、かなりの割合を占める子育てが意味のないものであるはずがありません。子育ては育てられるものと育てるものの相互作用であり、心理・社会的課題の達成に大きく寄与しているものと思われます。子育て体験によって培われた他者への気配り、人を成人させるという体験によって養われたあらゆる局面の物事に対応する力は、子育てが終わった後、新たな役割を獲得する上で重要な役割を果たすと考えられます。子育ての中で発揮されたものが、家庭内役割を越えた新しい役割の中で達成につながるものといえましょう。この主体的、あるいは積極的関与が大切です。自分が選択したものへ積極的に関与することが、自分らしさの中核となる自我を育てます。育児を通して役割を積極的に果たすことが、自己を確認し、自分を育てることになるはずです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」175号(2000年7月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。