アワビ
「磯のアワビの片思い」といわれるように、
アワビは1枚の殻しかもたないように見えますが、
よく見ますと殻の模様は渦巻き状で、ほとんどが左巻になっています。
夜になると磯にあがってきますが、隠蔽色なので
夜目に慣れないと分かり難いので、じっと目を凝らして、素早く手で摑んだものです。
アワビはいつも岩に張り付いているように思われていますが、
貝殻の縁に4~5個の孔が開いていて、危険を察知したときや、
夜間移動をするときは殻の孔から勢いよく水を噴射して泳ぎます。
貝類は、干物にするとアルギニンの量が増えます。
アワビの成分であるアルギニンは、元気の素といわれていて、
男性の精液の固形分の70パーセントを占めています。
また、お産をした婦人が健康を回復するときや、
胃潰瘍などの手術をした後の筋肉の回復にも、
昔からアワビは素晴らしい効果を発揮するとされてきました。
また、母乳の栄養価を高め、目のパッチリした子供が産まれるといって
妊婦も珍重して食べたものです。
アワビのキモ(内臓)は、緑色をしていますが、
これはアワビがアラメやワカメなどの海藻を食べているせいで、海藻中のクロロフィルの色です。
いわば、海藻のエッセンスの証明です。
ですから、このキモは栄養の塊であるといっても言い過ぎではないと思います。
グルタミン酸や、ビタミンA、タウリンの値も多く含まれています。
タウリンは血中のコレステロールの増加を抑制したり、視力回復、肝臓の働きの補助をします。
また、たくさんの種類のミネラルがありますので、細胞の活性や神経伝達の助けとなります。
コリコリした食感を何回も噛みながら味わいますと、顎の発達を助けますし、脳への刺激にもなります。
アワビは歯や胃の悪い人でも、消化器官の中で十分にこなれていきますので
心配せずどんどん食べてかまいません。
アワビの身をリンゴの皮を剥くように薄く長く切りとって
天日に干した(熨斗アワビ)は日本の中世以来つくられ、慶事や神饌につかわれてきました。
室町時代にアワビの身をたたいて、薄くのして、干物にしたのが始まりですが、
いつの間にかアワビがなくなって「熨斗・のし袋」に変わってしまいました。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」200号(2002年8月5日発行)に掲載された記事です。
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