フグ
フグの食べ頃は12月から翌年2月の寒いときですが、
2月になると白子(精巣)が大きくなって一層美味しくなります。
食通がこぞって「うまい」と讃えるのはオスの白子です。
中国の古い時代(春秋時代後期)に絶世の美人と謳われた西施(せいし)の乳房に由来して
「西施乳」といわれたものです。ふっくらとした食感と優しい旨味に人気があるのでしょう。
これはグリシン、リジン、グルタミン酸などの成分が多いので、
甘味や旨さの特徴をつくっているのだと思います。ビタミンB群も豊富です。
また、フグの刺身は、薄くそぎ切りにして菊の花のように美しく盛りつけるが、
その皿の中央には、細かく切ったフグの皮が盛り付けられています。
この皮にセレンという抗酸化酵素の成分が含まれているので、
この酵素が体の中で活性化すると、ガンの予防、精力減退、更年期障害の予防に役立ちます。
フグのフルコースは低エネルギー食なので肥満防止にもなります。
ただし、肝臓、卵巣、胃、腸、皮、眼などにテトロドドキシンという猛毒があります。
この毒性物質は麻酔性のもので、少量でも中毒死するので
調理は調理専門家によって行われなければならないことが条令で定められています。
事故はたいてい素人が調理したときに起こっています。
このように江戸時代からフグにあたるとすぐに死んでしまうので、
フグのことを「テッポウ」といっています。
フグ鍋を「テッチリ」「テッポウチリ」というのも、こんなところからきているのでしょう。
刺身、鍋、中落ちの唐揚げ、白子料理(焼き物、鍋など)、塩焼き、
フグ雑炊、いずれの料理もあっさりしていながら深い味わいがあります。
フグは活き締めしてすぐよりも、20時間ほど低温で熟成させた身肉のほうが、
イノシン酸やアミノ酸が増え、旨味が全体に回ります。熱燗のひれ酒もいいものです。
ふぐ売りに喰うべき顔と見られけり 大祇
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」206号(2003年2月5日発行)に掲載された記事です。
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