統合医療とは何だろうか? 第39回
- 統合医療
生活習慣で発がんに関与する因子はほかにもあります。それは喫煙と飲酒です。
喫煙は発がんの極めて強力な因子で、男性で40%、女性で5%は喫煙が原因だと考えられています。
特に肺がんは喫煙との関連が強く、肺がんの死亡のうち、
男性で70%、女性で20%は喫煙が原因といわれています。
肺がんのほかにも近年日本で増加傾向のある膵臓がんも喫煙との関連性が指摘されています。
そのほか、口腔内のがんや食道がんは喫煙と飲酒の両者によって発がんリスクが高まります。
どうして喫煙はがんを誘発するのでしょうか?
実は、たばこの煙の中には、多環芳香族炭化水素化合物やニトロソアミン類をはじめとする、
発がん物質が数十種類含まれています。
発がん物質の多くは、体内の酵素で活性化された後、DNAと結合をして、
DNA複製の際に遺伝子の変異を引き起こし、がん遺伝子、がん抑制遺伝子、
DNA修復遺伝子などに蓄積することによって、細胞ががん化すると考えられています。
たばこはそれを吸う人間のみならず、たばこの煙を吸い込むことによる受動喫煙によって
周囲の人間にも悪影響を及ぼします。
たばこは発がん以外にも、動脈硬化や胃潰瘍の原因にもなります。
たばこは自分だけでなく、周囲の他人にも健康上多大な迷惑をかける嗜好品ですので、
決して吸わないことが大切です。
一方、飲酒に関しては、WHO(世界保健機関)の評価では、
口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸と女性の乳房の癌の原因となるとされています。
またアルコールそのものに発癌(がん)性があり、少量の飲酒で赤くなる体質の
2型アルデヒド脱水素酵素(アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドを酢酸に変える酵素)の働きが弱い人では、
アセトアルデヒドが体内に残存するため、食道癌の原因となるといわれています。
口腔・咽頭・食道の癌は、飲酒と喫煙とが相乗的に発癌の危険性を高めます。
これらのがんは、しばしば同一人に発生しますが、
アルコールと煙草の有害物質がのどから食道に並行して作用することを考えれば当然の結果ともいえます。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」354号(2015年6月5日発行)に掲載された記事です。
著者 |
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略歴 1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。 1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。 1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。 認定資格 |