統合医療とは何だろうか?第7回
- 統合医療
前回の最後に、生体のバランスが崩れた状態(ストレス状態)から回復する際に生じる反応をストレス反応と呼ぶことをお話しました。ストレス反応は当然ストレス状態から生ずるわけですから、強いストレスがあると体に変調をきたすようになります。ストレスには手術やけが、火傷などの身体的ストレスと、不安、怒り、驚きなどの精神的ストレスがあります。これらはいずれも私たちの体(ばかりではなく、心にも)に大きな影響を与えます。
それでは過度のストレスはどうして体の変調をきたすのでしょうか?これに関しては前述したキャノンの報告があります。彼は外的に襲われた場合の生理的ならびに心理的反応を詳細に検討しています。その報告によると強いストレス状態におかれると副腎髄質(副腎は腎臓の上に付着したホルモン産生臓器です)からアドレナリンというホルモンが分泌されます。アドレナリンは心拍数や心拍出量の増加、呼吸数増加、筋収縮力増大、血糖値増加などを引き起こします。皆さんもたとえば大勢の人前で話しをするときなど、心臓がどきどきしたり、呼吸が速くなったりすることはよく経験されるでしょう。これも緊張に伴いアドレナリンが分泌されたためなのです。このアドレナリンの分泌に関しては、実は自律神経のひとつである交感神経を介して副腎髄質が刺激され、秒単位でアドレナリンが分泌されるといわれています。
もうひとつ困ったことに、交感神経が亢進すると白血球のひとつである顆粒球が増加し、活性酸素が増えます。活性酸素はもともと体内に侵入してきた細菌やウィルスなどを殺す働きをする、体にとって必要なものなのですが、増えすぎると細胞を酸化(つまり細胞が錆びる)させる働きがあります。これによって細胞に傷がつき内臓や脳などあらゆる体の細胞・組織が障害を受け、この結果がんが発生したり老化が進んだりします。つまり、強いストレス、しかも持続するストレスは人間の体を徐々に蝕むようになるのです
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」301号(2011年1月5日発行)に掲載された記事です。
著者 |
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略歴 1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。 1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。 1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。 認定資格 |