正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか? 第50回

     - 統合医療

次のテーマは「自分の魂と深くつながる」です。

魂、あるいは霊性(spirituality)を定義することは、非常に難しいことです。少なくとも私にその資格があるとは思えません。しかし、「心」と同じように、「魂、霊性」を感じることは誰にでもできることだと思います。例えば、最愛の人に先立たれた時、愛する人が残していった思い出の品々を眺めている時や或いは自分が眠っている時にその愛する人があたかも自分の目の前に立ち現われるのを感じることが皆さんにもあることでしょう。そう、人間とはこの肉体という物質的なものだけでできているわけではないのです。そこに魂があって初めて人間としての存在に意味があるのです。つまり、肉体とは魂をいれる入れ物であって、肉体イコール人間ではないのです。むしろ、魂こそ人間の本質であるともいえます。このように考えれば、「がんを治す」ということは、がんを手術や放射線、抗がん剤で取り除くという行為だけで成り立つものではないことがおわかりいただけると思います。

ケリーはがんから生還した人々へのインタビューの最中に、しばしば次のような言葉を聞いたと言っています、「魂のエネルギーは人間にとって最も重要な要素である。それを忘れてしまうと身体は疲れ果て、病んでいく」と。以前から何度も申し上げましたように、強度のストレスががんを引き起こすのも、この魂のエネルギーが枯渇することと無縁ではありません。ケリーが紹介しているシスター・ジャヤンティの言葉は象徴的です。「近年、わたしたちはただ、「人」であることよりも、「何かをする人」になることに心を奪われています。霊性への道のりとは、魂の奥底をのぞきこみ、静かに自分の現状へと立ち戻っていくことができる、そういうものなのです。魂のもともとの状態をきちんと認識していれば、わたしという存在は平穏でいられます」。

魂の状態を認識するために何が必要か?賢明な読者はすでにおわかりのことと思いますが、自分の直感を磨く時に必要だった瞑想がここでも重要なパートを演じるのです。

(この項、次回に続く)


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」369号(2016年9月5日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士