正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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脳を鍛える

寿命が長くなったために起こった皮肉な現象のひとつに、長生きのためにつらい思いをしている人が増えていることです。癌や心臓病、脳卒中などの予防のために節制した生活を送るといった努力している人は多いです。長生きしても、認知症(痴呆)などのために、これまでの生活とは違った形で生きていかなければならないこともあるかもしれません。

誰にでも起こる脳の老化、たとえば記憶力や想像力の衰えは、一定の年齢に達したときに急に起こるものではありません。少しずつ進行するものです。脳はニューロンという神経細胞が鎖のようにつながっています。思考の流れはこのつながりを通して、細胞から細胞へと伝わっていきます。ですから、このつながりがきれると、記憶力や思考力が途切れてしまうのです。

三〇歳ぐらいでは、このつながりはすでにかなり失われ、脳は縮み始めます。もっともその縮み方がそのまま知能の衰退となるわけではありません。十%縮んだからといって、知能が十%少なくなるわけではないということです。脳は非常に柔軟なので、新しいつながりを作ることができ、わずかな衰えですむわけです。四〇~五〇歳以降は、十年ごとに脳の重量が二%ずつ軽くなるそうです。一番減るのは記憶に関わる部分なので、最初に物忘れが出てくるわけです。

このような脳の老化を加速させている原因のひとつとして、ストレスがあるといわれています。現代のストレスは、心理的なものが多いようです。意思疎通の悪い部下であったり、頭の固い上司であったり、差し迫った締め切りだったり、お隣から聞こえる大音響や、少なくなったお小遣いだったりする。このようなストレスに対処しなければなりません。これを挑戦として受けとめられると、脳は想像力を発揮し、新たな神経細胞のつながりができることになります。マイナス思考では、老化が進みやすいということです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」232号(2005年4月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。