正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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考える力

新学期の大学では、新入生が胸をときめかせて入学してきたはずなのに、一月たつ頃には学ぶということに戸惑いを見せ始めるといった現象が起こります。自分のことを思い出しても、小学校から高校までは、「考える」ということをあまり教えられていないなあと思います。受身的な授業の中で、必要なことを覚える学習が中心です。聞いたことを理解できているかが、評価の対象になりました。加えて、「考える」ことの楽しさを教えられたことはなかったような気もします。知識を伝授されてはきましたが、その知識を生み出すための考える方法は身につかなかったわけです。

大学は昔よりも、丁寧に授業をしています。学生の理解を確認しながら先に進みます。それでも、高校の授業とは違います。情報量も多くなり、また、すべての情報が使えるわけではないことに気がつき混乱が増すようです。情報を集めて、整理して、考える課題の増える大学では、学習の方法がこれまでとは違うと気がつくまでは途方にくれる者も現れます。

社会に出ると、学校で習った知識はほとんど使えません。社会は問題に満ち溢れ、それも、複雑な構造になっています。問題解決の術を持たないことに、愕然とします。本を読んでも考える力がついたとは思えません。考える力をつけるためにどうしたら良いのでしょうか。

私たちは様々なつながりの中で生きています。家族、友人、知人といったように、強く太い関係もあれば、薄い関係もあります。これらの関係の意味を考えることが、どうも自分を考えるということに繋がっているようです。

なので、コミュニケーションを大切にすることが「考える」機会につながるわけです。太い関係の中では、相手を思いやって考える。薄い関係の中では、他者を理解するために考える。このような機会が提供されたら、能力を発揮することに繋がります。コミュニケーションが上手な人は「考える」機会をたくさん持っているといえるようです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」281号(2009年5月7日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。