正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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行くところがない

「家に閉じこもることは、寝たきりや認知症につながる」、よく聞くことと思います。実際、ご高齢の方だけではなく若い人たちと話していても、「行くところがない」と聞かされます。

認知症へのプロセスは、「行き先がない」→「家にこもる」→「テレビでごろごろ」→「受け身となる」→「思考力低下」→「意欲低下」→「無関心・うつ状態」→「認知症症状」です。

同様に寝たきりへのプロセスは、「テレビでごろごろ」までは同じです。そこから、「体力低下」→「疲れる」→「寝たり起きたり」→「寝たきり」、といったものです。

これらは仕事をしているうちは心配いりませんが、定年退職後に大きな問題に変わります。定年退職は、セカンドライフのスタートと言われますが、家に居場所がないように感じたり、やりたいことがなかったり。定年後に本当にやりたいことの決まっている人は、わずかかもしれないです。

定年後に辛いのは夫だけではなく、妻も同様です。夫がずっと家にいることにイライラ。平日の昼間まで面倒をみなければならない気分に陥ります。新たな人生はギクシャクものになるのは想像がつきます。意識して、行くところをつくることが重要です。

家に居場所を見つけたければ、まず外に居場所を見つけるという方法が効果的です。図書館や展覧会、習い事、映画、喫茶店など、何でも構いません。1週間大まかなスケジュールを決めて、それをベースにした生活を続けてみてください。あちこちに顔を出し、新しい知り合いを増やすことです。そして、帰宅後に外出先での出来事を、ご夫婦で話してみてください。仕事の話や愚痴を聞かされるよりずっと気持は楽なはず。夫の定年は妻の定年、家事の負担を楽にしてあげることが、その後の生活を左右します。

50代の方も、そう先のことではありません。休日家でごろごろはやめて、今から練習しておいた方が良いです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」310号(2011年10月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。