正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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読書の秋

「秋」はスポーツの秋や食欲の秋、芸術の秋にファッションの秋など、秋を豊かに表現する言葉でにぎわう季節です。最近、弱くなっているようではありますが、「読書の秋」もあります。

読書の秋は、秋の過ごしやすさを伝える言葉です。暑かった夏が終わり、やる気も集中力も持続しやすい時です。また、秋の夜長は1人静かに、読書でも楽しみましょうということだったはず。

文化庁の調査では、小学生の高学年と中学生は1か月に読んだ本の冊数は増えています。子どもたちの読書量が増えているのは好ましい傾向と思えます。これに対し大人の読書離れが指摘されています。1か月に1冊も本を読まないと答えた人が60%を超えているそうです。5年前の調査と比較すると、読まないと答えた人が15%も増えている読書離れが進んでいることがわかります。

読書量が減っているのは、スマートフォンなどの情報機器で時間を使うためであり、そもそも仕事や勉強が忙しくて読む時間がない忙しい大人の状況が反映かもしれません。確かに書店も減っていて本を手にする機会が減っているのも事実です。文字や活字に親しむものは「本」だけではなくなっているわけです。

スキルアップしないといけないとか、情報を集めなければならないとか、SNSの投稿のために何かしなければならないとか。余暇でさえ、有効に時間を使わなければならない社会になっている。何を得るのかわからない読書には時間を使えないということでしょうか。

読書に時間を使うということを、どのように考えると良いのでしょうか。自分に必要な情報だけを得るためならば、情報端末の方が手早く集めることができます。そうなると、読書は自分に関係ないものや想像のできないものを切り捨てることにつながりそうです。自分以外の者への想像力が減ってしまうかもしれない。

読書は多様性を受け入れ、想像力を楽しむもの。大人の余裕はそんなところからできるのだと信じたいものです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」466号(2024年10月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。