ヨーガの友人・生徒さんへ 「ブラフマ・スートラ」について
- ヨガ
昨年の8月、アイアンガー先生がなくなった直後再び、インドプーナに行ってきましたが、師の近くにいた方々も、誰もがこれからの方向性を模索しているような印象を受けました。私にとっても、彼の近くにいた時も、しばらく離れていた時も、グルジーは常にヨーガの源流であり、これからもそうであると確信しています。
そこで私はヨーガの原点を再度掘り下げて取り組んでみました。ターダアーサナ、サマスティティ、そしてブラフマ・スートラです。
「ブラフマ・スートラ」というインドの聖典がありますが、これはサーンキャ哲学や「ヨーガ・スートラ」の時代よりも後になって、ヴェーダンタ学派が現れた時、彼らが典拠とした原典です。サーンキャでは精神原理と物質原理、即ちプルシャとプラクリティという二元論を立てますが、「ブラフマ・スートラ」ではこれに対抗し、万有全ての起因を創造の神ブラフマンに求める一元論をとります。アイアンガー先生の思想体系はこれに近いものと思われます。
ただし私がここでテーマとしたい「ブラフマ・スートラ」は書物のことではなく、古代インドの古典舞踊や彫刻で求められてきた概念で、「ブラフマの糸」、垂直線のことです。この概念はヨーガの中にも取り入れられ、創造の神、「ブラフマ」といえば調和、息吹き、静寂、平和、引力を指します。人体の構造は、垂直に体の中心、正中線の両側でシンメトリーに作られ、「ブラフマスートラ」即ち、不変の垂直線は不動の力、重力を表します。それはまた、我々には神秘の創造エネルギー、生命力に触れて、体験できる垂線でもあります。
ヨーガで体を伸ばし曲げ、体重をどのように配分するかを「バンガ」といい、「サマバンガ」はこのブラフマスートラの両側を完全にシンメトリー、平衡にし、体重配分も完全に平衡をとることを言います。この時初めて我々は重力から解放され、自由となります。体は軽く美しく完全に調和し、その姿は古代インドの神々の彫刻にも見られます。
前回の講習会で、我々は「ブラフマ・スートラ」をターダアーサナ、サマスティティの中に求めました。ターダアーサナは「山のポーズ」を、サマスティティは「真っ直ぐに安定」を意味します。頭頂から体の中心を通り踵に至る正中線をこの「ブラフマの糸」に完全に一致させる為に、まずほとんどの体重を踵にかけ、基本体勢をとり、「創造の糸」を「生命エネルギー」が流れる、微細な感覚を確かめました。このブラフマスートラに正中線が一致したときにこそプラナが流れ、この生命の流れは全てのアーサナと動きと流れにも共通することも触れました。
この「ブラフマ・スートラ」を再度取り上げ、皆さんにも自分の体内で実験し、発見していただければと思い、ペンをとりました。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」349号(2015年1月5日発行)に掲載された記事です。