正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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Sat-Chit-Anand(Sacchidananda)―真実・意識(気づき)・歓喜

     - ヨガ

ここ数回ほどは現代ヨーガと古典ヨーガを比較することをテーマとしてきましたが、今回ももう少し掘り下げたいと思います。

19世紀末ヴィヴェーカナンダが欧米に渡り、ヴェーダやウパニッシャッドのインド思想やヨーガが全世界に広まるきっかけとなりました。この潮流はその後の世界に大きな影響を与えてゆき、現代までも続いているように思われます。その思想的基盤は伝統的な古典ヴェーダーンタ学派に対しネオ・ヴェーダーンタと呼ばれています。この新しい精神的潮流は全世界の文化や風俗にまで浸透し、欧米の文学界、ユングを始めとする精神・心理学、精神・心理療法から60年代のヒッピー文化に至るまで広く普及し、80年代にブームとなったヒーリング、チャネリング、自己啓発セミナーなどは総称してニューエイジ・ムーヴメントと呼ばれました。

我々が行っている現代ヨーガやクラニオセイクラル・バイオダイナミックス(頭蓋仙骨療法)もこの普遍的な流れと密接に呼応しています。以前にも触れたように、インド古典思想の多くやパタンジャリに代表される古典ヨーガは人間存在の本質的根源を「苦」とする(苦諦)原点から肉体や生を否定し、自然な感情や欲望を抑圧する人為的なコントロール(苦行)を通してモクシャやカイヴァルヤ(自由と解放)を目指すのに対し、タントリスムを通過してきた新しいネオ・ヨーガは肉体や生を肯定し自然な感情や生命を謳歌・歓喜するものとして前回まで話してきました。

このようにネオ・ヴェーダーンティスムに端を発する新しい精神性の潮流は全世界的な文化・風俗にまで発展しました。ヒッピー文化、ボブ・ディランやビートルズなどの自由と解放の音楽、デルガドやアドラーなどの精神・心理学、アリス・ミラーやピーター・レヴィンの精神・心理療法、ニューエイジ・ムーヴメント、クリシュナ・ムルティやオショーなど現代の智者・哲人の出現等々。

サット・チット・アーナンダ(真実・意識・歓喜)はこのネオ・ヴェーダーンタの本質を示す核となるマントラです。3つの要素が三位一体となり、人間存在と生命の真理を表す真言。

新しい潮流のヒーリング、クラニオセイクラル・バイオダイナミックスも人間存在の本質・根源を生命呼吸に見出し、従来の医療や治療のように病気や問題を治療したり、直すのではなく、生命の本質である「健康」に焦点を合わせ、一体となる方法をとります。我々の新しいネオ・ヨーガは「苦」からの解放を求める苦行ではなく、存在の本質、生命の根源、即ち宇宙の中心軸と一体となることであり、そのサウンドは:サット・チット・アーナンダ(サッチーダーナンダ)。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」371号(2016年11月5日発行)に掲載された記事です。

著者
吉田 つとむ
心と体のヨガ教室主宰

和歌山市出身、横浜市立大学卒業。パリ大学留学中にヨガと出合い、帰国後、沖ヨガ道場入所。沖正弘導師に師事。ヨガ指導に従事。インド・プーナのアイアンガー道場に通いアイアンガー師に師事。

略歴
・アイアンガーヨガ指導者として認証される。
・プーナの和尚ラジネーシ瞑想センターにて各種心理療法グループ研修後、和尚サニヤシン(出家者)となる。頭蓋仙骨療法(クラニオセイクラル・セラピー・バイオダイナミックス)トレーナー養成コース終了。
・ヴィパアサナ瞑想センターで瞑想修行。以降フェルデンクライス・メソッドの研修、気づきのレッスンとして応用指導に当たる。
・マイソールのアシュタンガ道場でパタビジョイス師に師事。
アシュタンガヨガ修行後、指導者として研修と指導に従事。

翻訳
ヨーガの樹

B.K.S.アイアンガー 著
吉田つとむ 翻訳
サンガ 2015/10/24