立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花
- 鍼灸治療
美しい女性を形容する『立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花』ということわざがあります。このことわざは江戸時代の天明年間につくられたことわざ辞典『譬喩尽(たとえづくし)』に記載されています。
東洋医学を学ぶ以前は、このことわざは美人の立ち居ふるまいを美しい花にたとえているのだなあと理解していました。しかし、漢方薬の観点から考えますと芍薬も牡丹も百合も漢方薬の材料であり、少し調べてみますとおもしろいことがわかりました。
芍薬の根は鎮静・鎮痛作用があり、ストレスによる腹痛、月経不順、こむら返り、皮膚のかさつきなどに使われます。牡丹は根の皮を使用します。瘀血(おけつ)の症状を改善しますので血の巡りを良くし月経不順や月経時の痛みによく使われます。百合は根の部分(鱗茎)を使用します。百の症状が合わさったような不定愁訴症候群を百合病(ひゃくごうびょう)と呼び、その百合病に効く生薬なのでユリに「百合」の漢字を当てたという説があります。
これらの薬効から、立ち上がるときめまい、ふらつきがある方やじっとしているのが苦手な女性は鎮静作用のある芍薬を服用すればよく、座ってばかりいて血流の低下した女性は活血作用のある牡丹を服用すればよく、歩く姿がふらふらし、精神不安のある女性は精神安定作用のある百合を服用すればよいというのが『立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花』の漢方的解釈といわれます。
芍薬も牡丹も百合も女性が健やかに美しく過ごすのに役立つ漢方薬なのですね。美しさは美しいものから作り出されるのでしょうか。これからの季節、ちょうどこれらの花が次々と咲き出します。美しいものを五感で楽しむことはアンチエイジングにもなるそうです。時には香りも楽しみながらゆっくり眺めてみましょうか。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」342号(2014年6月5日発行)に掲載された記事です。
著者 ●鍼灸師 |
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