統合医療とは何だろうか?第10回
- 統合医療
もう少し自律神経による白血球支配のお話を続けます。前回、日中の交感神経優位な時間帯には顆粒球が増えて、夜間の副交感神経優位な時間帯にはリンパ球が増えていることをお話しました。これは日中は人間が太古の昔から外に出て働くため、交感神経が優位な状態でたとえば怪我をして細菌が体内に侵入した際に顆粒球がその細菌と戦ってやっつけて生体を保護するといった機構が発達したためと思われます。一方、夜は家の中で食事をしたりあるいは睡眠をとるわけですから、副交感神経が優位となり腸の運動を活発にしたり、気持ちをくつろがせることが求められるわけです。
このように、人間の体内時計は日中外に出て働き、夜は家でゆっくりするという日内リズムによって時を刻んでいるわけですが、もしこれが逆になったらどうなるでしょうか?つまり夜遅くまで仕事をしたりパソコンに向かったりして、朝おきられずに午前中いっぱい寝ているという生活を続けていると人間の体はどうなるかということです。賢明な読者はもうおわかりでしょうが、こういった体内時計を無視した生活を続けていると自律神経のバランスが崩れ、免疫力が衰えてきます。具体的には不眠、食欲不振、夜間の動悸、昼間眠くなりいつまでも倦怠感が取れない、風邪がなかなかなおらないなどといった、いわゆる自立神経失調症の症状が前面に出てきます。夜はなるたけ早めに寝て朝早く起き、日中は仕事をしたり体を動かす、そして食事も規則正しく摂るといった生活が健康で長生きするために必要なことなのです。安保教授は、病気の9割は自律神経の乱れと、顆粒球とリンパ球の過剰反応によっておこるとおっしゃっています。9割の病気が果たしてこの学説で説明が付くかどうかは私にはわかりませんが、私たちの体と心を健やかにするためには自律神経の白血球支配の法則を理解することがとても重要だと思います。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」305号(2011年5月6日発行)に掲載された記事です。
著者 |
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略歴 1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。 1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。 1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。 認定資格 |