正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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人とつながること

人生にはいろんなことが起こります。楽しみや生きがいを感じることもたくさんありますが、時には自分一人では抱えきれないほどの大きな悩みにぶつかることもあります。悩みのあまりの大きさのために、心や身体が病気になってしまうことさえあるのです。

人とのつながりが健康にどんな影響を及ぼすかの研究があります。社会的ネットワークと健康の関係についての東大の研究では、誰もが役割を持っていると自覚できる仕組みや仕掛けの重要性について示しています。

社会的ネットワークの量、たとえば、友人・知人・家族の数、交流の頻度、地域活動に参加しているかなどの量を測定し、長期間追跡調査をしたものです。この結果では、繋がりが最も少ない人の死亡率は、最も多い人よりも2-3倍という結果であったそうです。

また、男性の方が女性よりも孤独になると死にやすい傾向にあるようです。妻との死別後6カ月以降の死亡の危険性は、男性は22%上昇する結果でした。けれど、夫と死別した女性の死亡の危険性は3%上昇するだけだったそうです。女性の平均寿命の長さの影響は、こういうところにもあらわれます。

人とのつながりがなぜ健康に良い影響を及ぼすのでしょうか。ネットワークは助け合いの手段、仲立ちとなるものです。身体的、精神的なサポートをくれる人がたくさんいるほど、心筋梗塞のような致死的な疾患からの回復が早かったというデータもあります。

その一方で、過剰にサポートを受け過ぎていると、自分が役に立っているという感覚を失ってしまい、病気になりやすいという結果もあります。

役に立つという感覚は、人の尊厳につながります。これが、日々の活力となるのです。病気や障害を持っていても、その存在だけで人を癒すこともあります。悩みを聞くだけでも助けとなります。

お互いに助けられる、助けるという関係にあることが大事です。安心で安全な信頼関係は確固とした健康文化のあらわれです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」324号(2012年12月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。