正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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ロコモ運動器症候群

ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ)というのをご存知ですか。筋肉、骨、関節、椎間板といった運動器の障害のために移動する能力が低下し、介護が必要になる、あるいはその危険性の高い状態をさします。

このロコモと2025年問題の関係が指摘されています。2025年問題はすべての団塊世代が75歳以上の後期高齢者になるために予測されているものです。65歳から74歳までの前期高齢者の数を追い抜き、1000万人も増えるといわれています。医療費、社会保障費の高騰が懸念される理由です。

これをロコモとあわせて考えると、平均寿命が延びることはよいのですが、運動器の健康が追いついていかない事態が起きています。そのため、ロコモおよびロコモ予備軍は総人口の約3分の1にもなるとされています。介護が必要なロコモの高齢者が増えるのです。

これまでの高齢化問題は地方が中心でした。過疎化とあわせて問題になっていました。しかし、2025年は都市部の高齢化の問題です。高齢者の増加数トップ5は、東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府、千葉県です。住民の高齢化だけでなく、建物の高齢化も進行します。ベッドタウンではエレベータも不十分かもしれません。マンションからの外出が困難で、近隣住民とのかかわりが希薄となり、引きこもる。これらは運動器、移動能力をさらに低下させます。一人で外出できない人が増えるのです。

高齢化にロコモがついていかず、環境の利便性で、さらに移動する機会が減っています。たとえば、歩く歩数がこの10年間で1000歩ほど減っています。エスカレータなど便利になっているためです。地方では車社会のためか、特に歩数が減っています。寿命の延びは、歩けない期間を増やしている結果になっています。女性の健康寿命が延びない原因のひとつです。ロコモにメタボ、認知症は、社会参加の制限につながり、介護が必要になるという流れになります。

2025年は昭和100年です。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」342号(2014年6月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。