コンブチャ
- ヨガ
私の生徒さんの一人がコンブチャ(スコビー)を育てていて、たまたまその株を分けてもらい私も育て始めました。コンブチャは1970年代に紅茶キノコと呼ばれ流行ったそうですが、当時私はフランスに滞在し、70年代後半に帰国して直後に沖ヨガ道場に入所したのでテレビや情報に触れる機会もなく紅茶キノコについて全く知りませんでした。
当地の近しい生徒さん4、5人と共に育ててみて様々な疑問が起き、より深く知りたくもなりネットや動画で情報を集めてみて、今全国的にブームとなり、スコビー専門店やコンブチャ・ショップも開かれていることを知りました。私自身も最初1株のボトルから始め、今では様々な株を取り寄せ、5つの瓶で5株を育てています。こうして新しく触れ合ったものに大いなる興味と情熱を持ち微生物という小さな生命に愛情を持ち「はまって」しまった自分自身に驚いています。
コンブチャは酢酸菌、乳酸菌、酵母菌からできているようで、スコビーというバクテリアと酵母でできた膜状の株とスターターと呼ばれるコンブチャの液体を紅茶に砂糖を溶かした液に入れ一次発酵させます。酢酸菌は好気性の菌で空気を必要とし糖分を酢(酢酸)に変えます。十分に一次発酵が進むと、今度は密閉のボトルに生姜、果物、フルーツジュースなどと共にコンブチャの液体を入れ密閉して二次発酵します。酵母菌は嫌気性の菌で炭酸ガスを発生させ密閉して炭酸飲料となります。
コンブチャは他の健康食品や飲料と何が違うのか?世の中には沢山の健康飲料や食品が出回っていますが、そのほとんどは私たちがお金を払って購入する商品です。コンブチャも健康飲料として販売されて、コンブチャ酵素飲料もあります。ケルプに於いてもコンブチャと酵素を融合するような商品を研究開発していただけないかと希望もします。しかし私たちがコンブチャに魅かれるのは商品としてではなく、バクテリアや酵母という微生物、小さな生命が発酵し、日々変化し発育する様を観察して、ちょうど良い頃合いを見て収穫し、食するという、プロセス全体にあります。
私は今このような新しい未知のものに触れて心がワクワクし生命の躍動に驚いています。またヨーガに最初に触れた時もこうではなかったか。アイアンガー師に出会った最初のころ師から言われた言葉が蘇ってきます。「ヨーガを長年実践し熟練者や指導者になると新鮮な気持ちを忘れ同じ事を生気もなく機械的に反復繰り返すようになっていないか。一方新たに始めた初心者は未知のものに触れ、新しい発見をし、喜びと生気にあふれている。私たちはいかにこの新鮮な心持を持ち続けられるか。」
これはヨーガに限らず全てのものに通じることでしょう。情報や知識を集め記憶を蓄積し、経験を積み「物知り」「学者」「識者」と思い込んでしまった者には新しい発見、未知のものに触れる喜びや驚きはなくなるでしょう。それは生気が失せた死者を意味します。知識や記憶、経験は今ここに存在する生きたものではなく、過去のもの、死んだものです。
ヨーガが相対峙するものは今ここに存在し生きている生命です。それはバクテリアや酵母とも共通するもので情報や知識、経験などでその本質を知ることのできない永遠に未知なものでしょう。この未知なるものを探求するプロセスにこそヨーガの本源があると思われます。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」445号(2023年1月5日発行)に掲載された記事です。